私は、コンピュータ技術の隊員として、このキリバス共和国に派遣され、病院のシステム構築の活動をしています。
「日本からパソコンの技術者が来た」ということで、私の元には、トラブルを抱えたパソコンがよく運ばれてきます。
ある日、年配の看護師さんが、ノートパソコンと段ボール箱を抱えてやって来ました。
どうしたのかと聞くと、パソコンが立ち上がらなくなってしまったとのこと。
診察してみると、OSのトラブル。しかも、かなり根深い。
「OSを再インストールする必要があるけど、いいですか?」
「わかったわ」
「中に何か大切なデータは入っている?」
うん、と頷くので、
「じゃあ、中身を全部バックアップを取った上で、OSを再インストールし、バックアップを戻しますね。データは無くならないから大丈夫ですよ。」
と説明すると、ほっとした様子。
帰り際に、
「これ、お礼にあげるわ。」
と段ボールをごっそり私にくれました。
中を開けてみると、プリンターのインクやトナーがぎっしり。
でも、全部、私が使っているプリンターのメーカーとは別のメーカーのやつ。
(これじゃあ使えないんだよね...)
と思いましたが、せっかくの好意。
「こんなにたくさん、どうもありがとう。」
と言うと、笑顔で帰って行きました。
きっと、自分が使っているメーカーのやつなんだろうな。
でも、限られた給料、限られた予算の中で、こんなにたくさんくれるなんて、かなりのフンパツです。
しかも、物がなかなか手に入らないこの国。
使うことはないだろうけど、好意が嬉しいですね。
別の日、パソコン診療科に、また別の患者が運ばれてきました。
「Excelを起動しようとしても、ファイルを開こうとしても、何をしてもWindows Media Playerが立ち上がって、開けないんです。」
診察してみると、ウイルス感染の様子。ウイルス対策ソフトも入っていません。
「ちょっと待っていて下さいね。」
と少し時間をもらい、元に戻してあげました。ついでに、
「ウイルス対策ソフトが入っていないから、何か無料のものをインストールしておいた方がいいと思うけど、どうする?」
と訊いたら、お願いしますと言われたので、それもインストール。
あくる日、同じ看護師さんがやってきて、
「これ食べて」
と、揚げパン(中身はカレー味の焼きそば)をくれました。
これは嬉しかったですね。おいしくいただきました。
またまた別の日、今度は外付けハードディスクがやってきました。
「これが使えなくなったの」
診てみると、ディスクにエラーがたくさん。振動などでやられたのかな。
一日入院してもらい、一晩かけて修復した上で退院させました。
そして、翌日。HDDを持ってきた看護師さんがやって来て、
「これ食べて」
と、ドーンとトレイに入ったご飯を私にくれました。
(これはさすがに一人では食べきれないよ...)
まあ、みんなで食べてということなのかな。
パーティーで余った食事のようにも見えましたが、それはきっと目の錯覚でしょう。
人それぞれ、感謝の表現の仕方はいろいろですが、概してこの国の人たちは親切です。
コミュニティが狭く、人と人との結びつきが強いからなのでしょうね。
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